厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 美しくベッドメイクされた高貴な夫婦のための寝所。ちらりと視線を横に流せば、ふたり分の枕とさらさらの真っ白なシーツが、あからさまに羞恥心を煽る。
 クローゼットの奥にしまい込まれたあの恥ずかしい夜着は身に着けてこなかったが、精一杯おしゃれをして、一歩も二歩も背伸びをしてきたつもりだけれど。

(本当に、今日からここで、ライズ様と一緒に眠るのかしら……?)

 そう思ったら異常に心臓が高鳴りだし、顔が火照ってきた。いったん出直したほうがいいような気もしてくる。このままでは待っている間に心臓が破れてしまいそうだ。
 怖気づき、腰を浮かせかけたそのとき、フランの部屋とは反対側にある扉が音を立てて開いた。びくっと体が震えて、座ったままのお尻が浮き上がる。

「フラン。待たせたか?」
「はっ、いえ、全然! い、今、来たところで……」

 どぎまぎしながら顔を向けると、バスローブを纏ったライズの姿が目に飛び込んできた。入浴を終えたばかりなのか、タオルで髪を拭きながら爽やかに近づいてくる。
 そんな状態では、いつもより露出が多いのは必然。バランスよく鍛え上げられた胸筋、彫像のように割れた腹筋がバスローブの合わせ目からしっかりと覗いていた。
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