厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 心を落ち着けるよう努力しながら、ライズに向き直って頭を下げる。

「危ないところを助けていただき、ありがとうございました。……花離宮になにかご用事でしょうか?」
「あぁ。実は猫を探していて……」

 ライズが不自然に言葉を切ったので、不思議に思い、顔を上げた。
 彼の視線はフランの頭頂部に向けられている。切れ長の瞳は、なにかに驚いたように見開かれていた。
 まさかと背筋が凍ると同時に、彼が距離を詰めてきた。

「へ、陛下……?」

 紫の視線は、まずフランの金色の瞳をじっと覗き込み、それから再びフランの頭の上へと流れて、なにかを観察している。
 おもむろに左手が伸びてきたと思うと、ふわりと頭の上に乗せられた。
 ――モフッ。

「……あっ!」
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