厄介払いされた聖獣王女ですが、冷徹なはずの皇帝陛下に甘やかされています
 悲鳴ともつかない声が出てしまう。
 この感覚。自分からは見えなくとも、もう疑いようもない。持ち前のケモ耳が、飛び出してしまったのだ。
 無意識に隠そうと手が動いたが、すぐにその手を掴まれて阻止されてしまう。
 動けずにいるフランを、鋭い視線が見下ろした。

「――おまえには、詳しく話を聞く必要がありそうだ」

       *

 フランは皇帝に連れられ、人払いをしたサロンに押し込められた。
 いくつかある椅子のひとつに腰かけたライズ。その対面にある席に浅く着席したフランは、ガチガチに身を凍らせている。

 今からどんな尋問をされるのだろう。洗いざらい告白させられ、その末には、無粋な正体を隠していたことを、咎められるのかもしれない。
 ふたりきりの空間は広いようで狭くて、緊張感に押し潰されそうだ。許されるならば今すぐにでも逃げだしたかったが、それは叶わない。

 頭上では、髪の間から突き出した三角の耳が、ぷるぷると震えている。ドレスに隠れた尻尾は恐ろしさのあまり縮こまっているが、まだ引っ込んでくれる気配はない。
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