縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
情けなさや悲しさに混ざって嬉しさがたしかに存在している涙。
「切神さま、私友達に逃げられてしまいました」

「あぁ。知っている」
「全部、私が悪いんです」

言いながら、薫子は切神の体にすがりついた。
涙は次から次へと溢れてきて止まらない。

薫子にはもはや制御できなくなっていた。
「そんなことはない。私と一緒にいることで、縁切りと縁ができてしまったんだろう」

切神が優しく薫子を抱きしめる。
この縁だけは決して離したくない。

そう、伝えてくれているように感じられた。
「これからも縁切りの力のせいで薫子が傷つくことがあるかもしれない」

薫子は切神の胸の中で左右に首を振った。
千桜も冴子も菊乃さえもいなくなったこの村で、自分1人で生きていくなんて嫌だった。

飛び出したくせにと責められても仕方にものを、切神はやさしく受け入れてくれようとしている。
薫子は涙をぬぐって顔を上げた。

そして「切神さま、私ともう1度やり直してください」
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