縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
けれどそれに反して薫子の表情は浮かなかった。
「どうした? やっぱり、具合でも悪いか?」

「いいえ、違います」
薫子は左右に首を振って菊乃との出来事を話して聞かせた。

切神はすべてを知っている様子だったけれど、黙って薫子の話を聞いてくれた。
「ここへ戻ってきて改めて思いました。こんな生活をしていればみんなが羨むのは当然のことです」

「薫子は神の妻となった。特別扱いするのは当たり前だ」
「そうかもしれません。だけど、私だってつい最近まで彼女たちと同じ生活をしていたんです」

薫子の言葉に切神は難しい表情で黙り込んでしまった。
「それで、薫子はどうしたい?」

その質問に薫子は居住まいを正した。
「できればもう少し切神さまの力を村の人たちへ分けて上げてほしいです。例えば菜園の果物。あれがあれば村はもっとうるおいます」

少なくても賽銭泥棒をしないとご飯を食べられない子供はいなくなるはずだ。
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