縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
村人たちが盗賊から逃げる足音や悲鳴が遠ざかっていく。
その後を追いかけていた盗賊たちの足音も、ようやく聞こえなくなった。

だけど油断はできない。
ふたりは息を殺してしばらくその場に座り込んでいた。

「どうしよう。家まで帰れるかな」
菊乃が不安げに呟く。
薫子は赤い髪を揺らして左右に首を振った。

今、女子供は村の一箇所に集められて暮らしている。
そこは普段村人たちの宴会場や寄り合い所として使われている建物だった。

ふたりが今いる場所からそこまで帰るには、さっき盗賊たちが走り去っていって大通りを通らないといけない。
途中で戻ってきた盗賊たちに出くわす可能性も高い。

薫子が少しだけ通りへ顔をのぞかせてみると、また土埃が舞い上がっている。
「もう少し様子を見たほうがいいと思う」

薫子は顔を引っ込めてため息交じりに言った。
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