縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
せめて盗賊たちが自分たちの寝床へと戻っていくのを見届けないと、ここから動くことはできない。
だが、それがいつになるかもわからなかった。

薫子は着物が汚れるのも気にすること無くその場に座り込んだ。
山菜売りの店からここまで走ってきたから疲れ果てている。

よく捕まらなかったと、自分でも驚いているくらいだ。
「せっかく山菜を買ったのに」

菊乃が呟き、籐の籠に入っている沢山の山菜へ視線をやった。
今は10月が終わろうとしている時期。

山へ入れば季節の食べ物が沢山採れる。
特に今年は栗が豊作のようで、帰ったら栗ご飯を作るつもりでワクワクしていた。

それが、こんなことになるなんて。
「大丈夫よ。私達が戻らなければ心配してきっと誰かが迎えにきてくれる」
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