縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
☆☆☆

「そんなに気にする必要はない」
ようやく食卓を囲んで、切神がそう言った。

土間の隣にはこれまた広い和室があり、そこに膳を準備していた。
「そんなわけにはいきません。神様に料理の準備をさせるなんて」

「薫子は案外頑固者なのだな」
切神はそう言ってお味噌汁を一口飲んだ。

そしてふぅと息を吐き出す。
どれもこれも神様らしくない行動に見えて、薫子もふっと息を吐き出した。

「あの、ひとつ聞いてもいいですか」
食事を進めながら薫子が言った。

「なんでも」
「どうして私を殺さなかったんですか」

その質問に切神は首を傾げた。
「殺す? どうしてそんな物騒なことを言うんだ?」

眉間にシワを寄せているから、本気でわからないのだろう。
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