縁切りの神様と生贄婚 ~村のために自分から生贄に志願しましたが、溺愛がはじまりました~
「あぁ。この山に暮らしているたぬきだ。きっと子どもたちの声が聞こえてきて楽しそうだったから、化けて出てきたんだろうな。だけど人間の子どもたちも敏感で、自分たちとはなにか違うと感じたんだろう。この子だけは遠ざけていた」
「だから1人ぼっちだったんですね」

切神は頷いた。
「それで、私も人間の子供の姿になってたぬきの子と遊び始めたんだ」

「それが、切神さまの友達ですか?」
「そういうことだな。だけど相手はたぬき。長く生きても10年くらいだ」

切神はそう言うと言葉を切った。
なんとなく切ない雰囲気が室内に漂う。

「そ、そのたぬきはきっと楽しかったと思います」
思わず、声が大きくなった。

「切神さまと遊べて、楽しかったと思います」
「あぁ。私もそう思っている」
切神はそう答えて微笑んだのだった。
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