紅色に染まる頃
祖母達と一緒にお茶を飲みながらおしゃべりしていた美紅は、ふとスマートフォンの着信に気づいた。

「父からの電話です。少し失礼致します」

断ってから席を立つ。

「もしもし」
「ああ、美紅。もうこっちに着いてるか?」
「ええ。今1階の茶室でおはあ様とシズおば様と一緒にいます」
「そうか。『京あやめ』の和菓子は買えたかい?」
「はい。とても運が良く、たくさん並んでいましたので、父上から頼まれた分も無事に買って参りました」
「それは良かった。ちょうど今お客様と一緒でね。お渡ししたいから、2階に届けてくれないか」
「かしこまりました。すぐに」

通話を終えると祖母達に声をかけてから、美紅は2階に続く古い階段を上がる。
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