紅色に染まる頃
後日、美紅の資料をもとに企画会議が行われる。

「まずは1件目のお問い合わせから参ります。こちらは先祖代々受け継がれてきた老舗の窯元です。お料理が映える器を提供したい、また、お客様に陶芸体験もお楽しみ頂きたいとのことでした」

役員達を前に美紅がプロジェクターで、窯元の作品が載せてあるホームページを映し出して説明した。

「ふーん、なかなか良い品だと思うが、小笠原家の見立ては?」

年輩の役員の問いに美紅が答える。

「はい。京都の職人さんの作品はどれも甲乙つけがたい素晴らしいものばかりです。ですので今回は、宿の雰囲気やお料理に合うことをポイントに料理長と一緒に選ばせて頂こうかと。この窯元ももちろん候補に挙げております。食器の統一感を持たせる為にどこか1か所にお願いするつもりですが、もし不採用となっても、お客様の陶芸体験のお話は興味深いかと」
「確かに。お客様に京都を楽しんで頂けるよう、ご提案出来るものがあるのはいいな」

その後も盛んに意見交換され、美紅の提案により、宿の広間を使って様々な催しや展示即売などを行うことになった。

「宿にはおもてなしの茶室の他に、多目的に使える和室や広間もあります。例えば日替わりや週替りで和風のアクセサリーや小物を販売したり、呉服店や工房の展示ブースを設けても良いかと」
「そうだな。騒がしくならないよう、奥の広間を使おう」
「はい。あとはコンシェルジュのように、京都のご案内役のカウンターを設けるのはいかがでしょう?既に小笠原と縁のある京都在住の方々から、ボランティアでやっても良いとお声かけ頂いています」
「ほう、それは是非」

大まかな線は決まり、あとは現地で説明会を行ってから具体的に先方と話し合うことで会議は落ち着いた。
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