紅色に染まる頃
第十八章 踏み出した大きな1歩
夏になり、京都の隠れ宿は無事に竣工。
地元の職人や地域の人々を招いて内覧会も行った。

すると、自分達も是非この事業に参加したいという声が上がる。

「全部で何件問い合わせがあった?」

伊織の言葉に美紅が資料を手渡しながら説明する。

「かなり具体的な案を提示してくださった方々だけでも10件です。装飾や食器に使って欲しいという工芸品の職人さんや陶芸家の方々、他には、和風のアクセサリー販売や着物のレンタルと着付けサービスなどもあります。あとは、宿で提供するお食事に地元の野菜を使って欲しいという農家や、和菓子を卸したいという和菓子店のご要望もありました」
「なるほど。多岐に渡っているが、どれもとても興味深い。地元の方々の協力はありがたいし、何より京都の魅力を更に感じて頂ける」
「そうですね。一つ一つ前向きに検討させて頂ければとお返事差し上げましょうか?」
「そうだね、よろしく頼む。今度、社内の企画会議でも議題に上げよう。資料作りをお願いしてもいいかな?」
「かしこまりました」

美紅は、問い合わせがあった所のホームページをチェックし、1件ずつ詳しく資料にまとめた。
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