君に僕の好きな花を
高校生活はあっという間に終わりを迎えた。

卒業証書の入った黒い筒を持ち、三年生という大切な一年間を過ごした教室で私はぼんやりと窓の外を見ていた。窓の外にはグラウンドが見えて、私と同じ卒業生が歩いているのが見える。

「ハァ……」

四月からは夢見ていた大学生だ。それも地元ではなく、ずっと小さい頃から憧れていた横浜の大学だ。それなのにーーー。

ふと頰が揺れていることに気付いた。数秒かけて泣いていることに気付く。泣いていると自覚してしまったら止められなくて、誰もいない教室で私は嗚咽を漏らしていた。

窓から見える自然豊かな景色や、高校で過ごした楽しかった思い出、その全てがただ愛おしくて、離れることが今さら寂しく感じてしまう。

涙をただ拭う。目が赤く腫れてしまっていたら、家族に何か言われるかもしれない。でもそんなことじゃ涙は引っ込んでくれなかった。

「……大丈夫、じゃなさそうだね」

そんな声に私は顔を上げる。どこかオドオドした様子でそこにいたのは、同じクラスだった男子だった。
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