なぜか御曹司にロックオンされて、毎日ドキドキと幸せが止まりません!

ロックオンされたら、今度は求婚されはじめました!

「――ということで、娘さんを、きらりさんを僕にください! 一生大切にいたします!」
 狭い我が家の居間に、紅月家の五人と日本人男性としては規格外サイズの神永さんがひとり。四対二で、卓を挟んで座っていた。
 正確には、なぜか神永さんは土下座をしている。

 当然頭を下げられている両親も、目を白黒させながらあたふたしていた。

 子どもの頃、再放送のドラマとかで見たことのある、義理の親へ結婚のお許しをもらいにきた、まさにあの場面と同じシーンが目の前で繰り広げられている。

「印刷会社へも僕から無利子で融資させてください。いえ、僕が必ず半年以内に黒字に転じさせてみますので、どうぞ娘さんと会社の経営は僕に任せてください」

「……ねえ、お父さん、」
 困惑した様子で先に口を開いたのは母のほうだった。
 なんとも言えない表情を浮かべた父へ、ちらりと視線を向けながらである。

「決して事業を乗っ取ろうというつもりはありません。紅月さんご夫妻には本業であります印刷業務へ安心して専念していただくためにも、僕が経営部門を担わせていただくだけのことです」
 神永さんは頭を下げながら、ネイビーのジャケットの内ポケットからさりげなく名刺ホルダーを取り出した。
 そこから見るからに高級そうな透かしの入った名刺を一枚取り出すと、両手で丁重に両親の前へ差し出す。

「先ほども申しましたが、神永コンツェルンの次期当主ではありますが、現在は大学時代に興したIT企業で社長をしております。経営も自ら行っていたので、ひと通りのことはお力になれるかと思います。娘さんをいただく代わりに、どうぞ僕を利用してください」
 そう言った神永さんは、よりいっそう平身低頭を貫いた。

 隣に座っていた私は、あまりにも唐突すぎる展開に、思わず彼の名前を叫んでしまう。


「か、神永さん! 面を上げてください!」
 次いで目の前の両親たちも私のあとに続き、同じように神永さんの土下座を静止させるような言葉を投げかける。

「いえ、娘さんとの結婚を認めていただけるまでは顔を上げられません」
 語気荒く、神永さんは頑な決意を告げた。








 
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