捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした
そう思いつつ、あの完璧なまでのルックスを誇る男性から、着替えるたびに目を細めて「可愛い」「似合う」と褒められれば、鼓動が勝手に騒ぎ出してしまう。
しかしひとたび更衣室に戻って鏡を見ると、ため息が漏れる。
服はこれ以上ないほど素晴らしいが、着ている人間が自分では魅力が半減だ。
まっすぐな黒髪をひとつに縛っただけの髪型や、ほとんどカラーを取り入れていないシンプルすぎるメイクでは、完全に服に負けている。
そろそろ着替えにも疲労を感じてきた頃、カーテンの外で亮介がスタッフに「じゃあ、今彼女が着たものを全部ください」と告げているのが聞こえた。
(新ブランドのPRに必要なのかな? 先にイメージを伝えてくれれば、昼間にひとりで買いに来たのに。私が試着した意味ってある……? それにしても総額いくらするんだろう)
購入したのはオフィスで着られそうな綺麗めなブラウスやボトムから、普段使いできそうなカジュアル路線のトップスやデニム、さらにデートやちょっとしたパーティーにも行けるようなワンピースやドレスなど、ざっと三十点ほど。
それに加えて靴やバッグも追加されていて、フィッティングルームから出てくると、亮介が頼んだ大量の商品がラックにかけられている。