捨てられ秘書だったのに、御曹司の妻になるなんて この契約婚は溺愛の合図でした
当然経費として計上する予定だが、一気にこれだけの買い物をしたことがない庶民の凛にとって、いくらになるのか想像もつかなかった。
「いくつか持って帰って、あとは配送にするか。立花」
「はい」
阿吽の呼吸で会計をしている亮介から配送伝票を受け取り、スラスラと会社の住所を書いていく。職業柄、自宅の住所以上に会社の住所のほうが何倍も書き慣れていた。
「新ブランド用なら、秘書室ではなく副社長室へ直接運んでもらいますか?」
新ブランドの企画は副社長が選抜したメンバーによって進められており、社内の人間であっても企画メンバー以外には一定以上の情報は伏せられている。
それを配慮して尋ねた凛だったが、頭上から聞こえたのは亮介の呆れた声だった。
「なにを言っているんだ、これは君のものだ。君の自宅へ送ってくれ」
「……はい?」
「家族のために頑張っているのはわかったが、自分を顧みていないだろう。これは普段尽くしてくれている君への礼だ、受け取ってくれ」
そこまで言われ、ようやく意味を理解した。この大量の服は仕事に使うものではなく、凛に買い与えてくれようとしているのだ。