夢×恋グラフィティ

そう言えば、私、噂だけでしか岸くんのことを知らないや。

気になって、その男子生徒が見つめる方向に私も視線を向ける。

「あーもう。うるっさいんだけど、何?」

すると、窓際の席で机に突っ伏していた男子生徒が不機嫌そうに低い声をあげた。

こちらを睨みつける顔を見て、私は思わずカチンと固まってしまう。

サラサラな黒髪に、透き通るような白い肌。
まつ毛はくるんと上向きカールしていて、目力も半端ない。

…か、可愛い!なんかお姫様みたい…。

そこにいたのは、まごうことなき美少年。

普通ならそれだけで物怖じしてしまうのに。

「お!お前が岸陽飛か。俺は隣のクラスの真田唯月。よろしく」

真田くんは、全く動じずツカツカと岸くんが座る席に向かって歩み寄った。
私も慌ててその後に続く。

「真田?あぁ、お前が…鈴城と仲良いっていう」

「俺のこと知ってくれてんの?岸に知ってもらってんの光栄だな」

ジロッと面倒くさそうに前に立つ真田くんを見据える岸くん。

私は、真田くんの近くでハラハラとその状況を見守ることしかできない。

「で、その真田が僕に何の用?」

「単刀直入に言うと、実は俺と宙、そして、ここにいる御井で部活を立ち上げようとしてるんだ。メンバーが4人以上いるんだけど、ぜひ、岸に入って貰いたいなって。今日の放課後にでも、詳しく話しをしたいからよかったら俺に時間くれない?」
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