SENTIMENTALISM
雨の音が静かな部屋に響き渡る。
冷めてしまった紅茶にはあたしと綾子さんが映っていた。
「この前慧斗が血相を変えてやって来たわ」
「……慧斗が?」
「りく、襲われそうになったのね」
背中がゾクっとした。
急に舌が渇いて喉がカラカラになった。
今でもあの恐怖は薄れることなく嫌になるほど鮮明にこの身体に焼き付いている。
「もうこんなのやめてくれって言いにきたわ。ちょうど今のりくみたいに」
そう言って綾子さんは煙草を灰皿へと押し潰した。
グニャリと潰れた煙草は真っ白な灰皿の上でぐったり横たわる。