SENTIMENTALISM


「そういえば、梨紗ってバイトしてないよね?お金どうしてるの?」

「んー、買ってもらったりー。あとは、綾子さんに良い稼ぎ方教えてもらったんだ」

「綾子さんに?」

あたしは首を傾げる。
あの人が高校生のバイト先を紹介するなんて、想像できない。

「そうだ。今日はりくも協力してよ」

梨紗は楽しそうに笑ってみせた。
頬に浮かんだふたつのえくぼを、あたしは黙視した。



行き交う人達は足速にあたし達を通りすぎていく。
あたしが世界で取るにたらない存在なのを、まるでみんな知っているかのように。

さっきまで晴れていた空が灰色に変わったのを

そのときのあたしはまだ気付いていなかった。




< 40 / 159 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop