SENTIMENTALISM
「そういえば、梨紗ってバイトしてないよね?お金どうしてるの?」
「んー、買ってもらったりー。あとは、綾子さんに良い稼ぎ方教えてもらったんだ」
「綾子さんに?」
あたしは首を傾げる。
あの人が高校生のバイト先を紹介するなんて、想像できない。
「そうだ。今日はりくも協力してよ」
梨紗は楽しそうに笑ってみせた。
頬に浮かんだふたつのえくぼを、あたしは黙視した。
行き交う人達は足速にあたし達を通りすぎていく。
あたしが世界で取るにたらない存在なのを、まるでみんな知っているかのように。
さっきまで晴れていた空が灰色に変わったのを
そのときのあたしはまだ気付いていなかった。