それでもキミと、愛にならない恋をしたい

 私だって何度も写真の中のお母さんに尋ねたけれど、答えなんて返ってこない。お父さんの幸せを祈っているのは間違いないだろうけど、新しい奥さんの存在を認めるかどうかなんて、お母さん本人にしかわからない。

 想像で『お母さんもきっと喜んでる』なんて綺麗事は聞きたくない。

 もし裏切られたと嘆いていたとしたら? 他の人を好きにならないでほしいと泣いていたら?

 そう考えたら、私はとても受け入れられない。

「だから、私は楓先輩とこれ以上……一緒にはいられません」

 肩で息をする私を前に、先輩は驚いて目を瞠った。

「ちょっと待って。『だから』ってなに? 菜々の両親の話と、俺たちと、なんの関係が」
「希美さんの想いを背負う自信も、先輩の希美さんへの想いごと受け止められる覚悟も、まだ私にはできません……!」

 私はそれだけ言い切ると、ベンチから立ち上がり、勢いよくその場から走りだす。

 言い逃げなんて卑怯だし、後ろから楓先輩が驚いた声で私の名前を呼んでいるのも聞こえたけれど、私は振り返らなかった。



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