それでもキミと、愛にならない恋をしたい
第九章

 降り立った駅は、以前と比べて随分綺麗になっていた。

 引っ越す数年前から駅の再開発の工事をしていたのが今年の夏に終わったようで、構内のエレベーターやトイレが新しくなっているし、駅の東口と西口を繋ぐ連絡通路も出来ている。駅前のロータリーは広くなっていて、乗り入れるバスも多そうだ。

 中学は自転車通学だったし、駅を使う頻度は多くなかったけれど、生まれてから十数年住んでいた街の最寄り駅はやっぱり馴染みがある。

 今住んでいる街からここまで、二回の乗り換え時間を含めて約四十五分。新しい家に引っ越した時はとても遠くに来てしまったような気がしていたけれど、電車で移動すると案外近くて拍子抜けした。

 私は東口から出て、以前住んでいたマンションを目指して歩く。通っていた小学校を越えて、架道橋をくぐり、目印にしていたコンビニを左に曲がればもうすぐだ。

 そのコンビニに寄ってお茶を買おうと思ったけれど、コンビニはガラス張りのおしゃれな美容院になっていた。イメージカラーである緑と青の看板が外され、外観はレンガ調の壁で洋館風になっているけれど、形自体は変わっていないから中だけ作り替えたようだ。

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