それでもキミと、愛にならない恋をしたい

 スマホをしまい、代わりに車のキーを出しながら、お父さんが不本意そうに言った。

「とにかく心配してたよ。もしかしたら、自分の不用意なひと言で菜々を追い詰めてしまったかもしれないと」
「そんなこと……」
「それから、なにか勘違いしてそうだとも言ってたよ」
「……勘違い?」
「僕には詳しくはわからないけど……彼氏なんてまだ早いとは思うけど! あれだけ菜々を心配してわざわざ家まで来てくれたんだ。……連絡くらいはしてあげなさい」
「うん」

 私の返事を待たずにどんどん先を歩いていくお父さんの背中を追いかける。隣に並ぶと、自分の腕をお父さんの腕に絡めた。

「菜々……」
「今日だけだから」

 照れくさくて、お父さんの顔を見られない。最後に手を繋いで歩いたのはいくつの時だろう。腕を組むなんて、運動会の二人三脚以外では初めてだ。

 私はまっすぐ前を向いたままだったけど、こちらを見るお父さんが嬉しそうに笑っているのがわかった。




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