それでもキミと、愛にならない恋をしたい
先輩を呼び出しておきながら、いざ話そうと思うと言葉が出ないなんて。私は徐々に焦ってくる。
「あの、あの……私……」
「菜々。大丈夫、ゆっくりでいい」
そう告げる先輩の優しさは、ここで初めて弱音を聞いてくれた時と全く変わらない。
私はこくりと頷き、ゆっくりと言葉を選びながら口を開いた。
先輩から逃げ出したあと、今年の三月まで住んでいた街へ行っていたのだと話すと、先輩は「そっか」と納得したように頷く。
「先輩が伝えてくれたおかげで、お父さんが迎えに来てくれました。そこでお父さんの本音を聞いて、お母さんからの手紙を受け取ったんです」
「手紙?」
「私が……恋を知ったら渡すようにと、お母さんが生前お父さんに託していたらしいです」
私に恋を教えてくれた張本人に話すのはめちゃくちゃ恥ずかしい。両手で口元を隠しながらもごもごと話すと、隣の先輩も心なしか少し耳が赤く染まっている。