それでもキミと、愛にならない恋をしたい

呼び方ひとつでこの調子じゃ、昨日電話で話したあげく家の近くまで来てくれたと話したら、学校中に響き渡る声で叫ばれてしまいそうだ。

「それより、テスト勉強の予定も決めて先輩たちに送らないと」
「そっか。じゃあその相談も兼ねて、放課後にたくさん話そう! 菜々と恋バナできるなんて、めちゃくちゃ嬉しい!」

満面の笑みの京ちゃんを見て、私も嬉しくなる。

『うまく話そうとしなくても、彼女ならわかってくれるんじゃないか?』

昨日楓先輩が言っていた通りだった。

全部をうまく話そうとしなくても、相手に真剣に向き合えば、きちんと伝えられる。

昨日『気負わずに頑張れ』と言い残し、クロスバイクに跨って遠ざかっていった背中を思い出すと、また心臓がきゅうっと甘く痺れた。


< 68 / 272 >

この作品をシェア

pagetop