【ご令嬢はいつでも笑みを心に太陽を】婚約破棄&処刑されて転生しましたけれど、家族と再会し仲間もできて幸せです。亡国に瀕したダメ皇子が今更取り戻しにいらしたけれど、出来のいい第二皇子に抹殺されるようです
非業の死、のち第二の生(1)(※)
「お前との婚約を破棄する!
アイリーン・ロー男爵令嬢への非道な仕打ちの数々はすべて明るみに出ている!
お前のような下劣で卑怯な者が未来の国妃だと? ありえん!
セントライト王国の第一皇子である我アドルフ・アブソルートが、倒れられた国王陛下に代わって厳粛に命ずる。
ミラ・サーフォネス、本日の正午、お前を斬首に処する!
五大伯爵家ともあろうサーフォネス家が落ちたものだ!
いいか!? 本来ならば降格処分を与えねばならないところだが、今回はミラの処刑だけでことを治めてやる。
私の恩情をありがたく思え!」
どうして……!?
急な病でお倒れになった国王陛下。
そのお見舞いに、家族で来たら、いきなり、こんな……!
「アドルフ殿下、なにかの間違いでは!? 我が娘がそのような……!」
「控えろ、サーフォネス! 私は今父上の正式な代理だ!
もはや決定は覆らん、ミラを連れていけ!」
「おっ、お待ちください! まさか、そんな!」
「ど、どうしてなの!?」
「ミラ!」
あっという間に自由を奪われ、お父様とお母様とお兄様から引き離された。
わからない……!
なにがどうなってこんなことになっているの!?
回廊をまるで罪人のように歩かされてゆくその途中。
親友リサが人目もはばからずに追いかけてきてくれた。
「ミラ、ミラァ!」
「リサ……!」
「きっと何かの間違いに決まってる! ラルフ様に言って命令を取り消させますわ!」
「ああ、リサ……!」
「すぐに解放されますわ! こんな横暴、五大伯爵家が絶対許すはずがない! 気を確かに持っていらして!」
「え、ええ……!」
……けれど……。
リサと話したのはこれが最後になった。
アドルフ様の通告通り、私(わたくし)は斬首によって処刑された……。
しかも、私の首を落としたのは、リサの婚約者であり第二皇子であるラルフ様。
これを見た貴族たちはみな思ったはず。
アドルフ皇子に、逆らうことはできない……。
その時を待つ間。
処刑場で私は、刃が降りて来るまでひたすら祈りの言葉を口にした。
なにかをしていないと気が狂いそうで……。
――お父様、私は努力いたしました。
それでもきっと、足りなかったのでしょう……。
皇子の妃としての役目を果たすことができず、本当に申し訳ありませんでした。
お母様の教えを常に守ってまいりました。
令嬢はいつでも微笑みを。
けれど、ああ、今だけは笑うことができません……。
お兄様、我が家はみんな心に太陽を持っているといって、いつも笑わせてくださった。
お兄様の笑顔が見れなくなると思うと、胸が引き裂かれる思いです……。
リサ、私の一番の親友。
あなたと一緒に王家を支えるのが私たちの夢だった。
約束を守れなくてごめんなさい。
どうか、どうか、私の分も幸せになって……!
目の前ではがくがくと手が震え、爪が食い込んだ皮膚からは血が出ている。
胸が苦しくて、窒息しそう。
見物人たちの中には、泣き叫ぶお母様とリサ。
必死に抵抗を続けていたお父様とお兄様は、兵にがんじがらめにされ、身動き一つとれないでいる。
「ミラ……、覚悟を……」
振ってきた声を見上げると、悲痛な面持ちのラルフ様……。
……ああもはや……。
弟でさえも止められないのなら、アドルフ様のご乱心は誰にも止められない。
これでは、この国の人たちはどうなるの……?
震えながら乾いた唇をなんとか開いた。
「……ア、アドルフ様を……どうか、お願いいたします……」
「……承知した……」
……冷たい剣が首を跳ね、私の人生はそこで終わった……。
これが、一度目の人生だった。