♂のボクは、♀︎に恋をしない

僕の好きな人

僕には好きな人がいる。
1年3組桜木琉斗(サクラギリュウト)。
僕は男の子だけれど、男の子が好きなんだ。
それについて悩んでいた僕。
幼なじみで同じく性別に悩む栗原秋(クリハラアキ)。人間関係が壊れて僕らのグループに入った若生衣鈴(ワコウイスズ)。
女の子が好きな女の子、松嶋彩咲(マツシマアサキ)。
男性恐怖症の男子、松嶋依咲(マツシマイサキ)。
部活でいじめられ不登校になった真波瑠来(マナミルキ)。
この6人で立ち上げた部活は、『挫折部』。
いつも図書室の隣にある部屋で、こっそり持ち込んだお菓子を食べ、お喋りをするのんびりした部活。
ただし誰でもウェルカムなわけじゃなくて、人並み外れた道を歩んできたり、いじめられたり、性別に悩んでいたり。
そんな"挫折"って言い方も良くないけど、そんな道外れな人が入る部活。
今のところ、部員はいつメン6人だけ。
まぁ、6人以外の人がいてもつまらないからお断りするけど…。
今日の放課後。
それぞれ持ち寄ったお菓子をつまみ、適当に話していたとき。
ガラガラッ!
「た、大変だよっ…!」
彩咲?
「どしたん彩咲〜」
「小テスト死んだの?」
すると彩咲は顔を真っ青にしながらぶんぶんと首を振って。
「依咲が、…依咲が絡まれた!」
は?絡まれた?
「あの4組の…イタクラに!」
イタクラ…?
「僕行く。案内して」
「僕も行くよ…!」
「秋は待ってて。僕一人でアイツは大丈夫」
無理している秋にニコッと微笑む。
秋は相変わらず心配そうな顔だけど、ほっとしているのが空気感でわかる。
秋は体は女で心は男。
正義感が強い秋らしいけど…最近男と女で体格差が出てきてしまっているから、色々心配だ。
別に、秋を女って言ってるわけじゃないけどね。
そんなことを考えつつ彩咲の案内通りに校内を走る。
とりあえず今は依咲を助けることに集中…!
「っ、やめて…!」
依咲!?
どこからか依咲の声が聞こえてきた。
「依咲ーっ!!」
彩咲と依咲は双子。
彩咲がお姉ちゃんで、依咲が弟。
2人は誰もが羨むほどの仲良しで、何をするときも一緒だった。
「依咲ぃぃぃぃっ!」
彩咲が叫ぶ。
僕は目を閉じて、神経を集中させる。
「っ、彩咲!」
「何!?」
「家庭科室だ!家庭科室を開けろ!!」
微かだけど、家庭科室から声が聞こえる。
「わかった!」
彩咲は階段を5段、一気に飛び降りた。
彩咲…。スカート…。
「依咲っ!!」
一足先に、彩咲が家庭科室に飛び込む。
「彩咲!?依咲は…」
大丈夫か、と言おうとした瞬間。
「い…さき…?」
彩咲の声が廊下に響く。
中を除くと、依咲が倒れ込み、それを男子生徒数人で取り囲んでいるところだった。
その瞬間、堪えていた何かがプツリと音をたてて切れる。
「…ぶっ殺す」
自分でもどこから出ているのか分からないくらい低い声で言う。
彩咲がスマホを取り出してカメラを起動する。
もう、理性なんてどうでもいい。
一気にドアを開けて、叫ぶ。
「おい!依咲を、返せ!!」
男子生徒はニヤニヤをやめない。
そして…僕は、アイツらに殴りかかった。
ドカッ!
「っ、ぐぁ…!」
1番前にいた男子を殴り飛ばし、近くにいたやつらを足でなぎ倒す。
本当に数分だったと思う。
ハッと気づいたときにはもうすべてが終わっていて、依咲を彩咲が揺り起こしていたところまで記憶が飛んでいた。
「っ、依咲…!大丈夫…!?」
彩咲が涙目になってるの、初めて見たな…。
2人を連れて部室に戻る。
「3人とも…!大丈夫だった!?」
「心配したんだよ…!」
疲れた…。
久しぶりに人を殴った気がするな…。
うーんと伸びをしてその辺のイスに座る。
くっそ…まだ1ページ目なのに、展開急すぎんだろ、意味わかんねーよ…。
そう思ったけれどかなり疲れていたのか、すぐに寝てしまった。
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