絶縁されたので婚約解消するはずが、溺甘御曹司さまが逃してくれません

4. 撫でられて、ふわり


 ふと感じた香りがいつもと違う気がして――絢子の部屋に置いてあるルームフレグランスよりももっと好みの香りに包まれている気がして、重い瞼をゆっくりと開く。

「!」

 視界に飛び込んできたのは、いつかのクリスマスイブに玲良がプレゼントしてくれた大きなうさぎのぬいぐるみではない。まさかの玲良本人だった。

「あ、あああ、あっ玲良さん……っ!?」
「おはよう、絢子」

 玲良は自分が目覚めた後もベッドから出ず、絢子が起きるまでずっと隣で寝顔を見ていたらしい。眠そうな様子もなくしっかり覚醒しているところを見るに、かなり前から起きていたようだ。

 しかしなぜ隣に玲良が――と思い返したところで、昨日の夜の出来事を一気に思い出す。

(そっか……私、家から追い出されて……)

 一から十まで改めて思い出してみると、浮世離れした出来事ばかり。父だと思ってきた人と血の繋がりがなかったこと、自分が母の不義による子だったこと、生まれ育った桜城家を追い出されたこと、婚約者だった玲良に捕獲されてこのホテルに連れて来られたこと、しばらくの間ここで玲良と一緒に過ごすと決定したこと。

 否、最後に関しては今からでも軌道修正できる。昨日は慣れないホテルのスイートルームで一人ぼっちになる絢子のために一緒に泊まってくれたが、玲良には獅子堂家という帰るべき家がある。

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