断罪された公爵令嬢は自分が聖女だと気づき、甘い溺愛の中でもう一度人生をやり直す
エイリルの聖女の力はまだ分からない。

ただあの時、ベルシナ国の水不足に真剣に向き合う彼女をみた時、何故か彼女の祈りが届いて欲しいと思ってしまった。



「まずは祈ってみたらどう?雨を降らせて下さいって」



ただの悪戯のような助言で、彼女は本当に雨を降らせた。

彼女の聖女の力は未だ底知れない。

聖女リエナの方が役に立つのかも知れない。

エイリルに述べた助言が頭をよぎる。


「国は優しさだけじゃどうにも出来ない。回っていかない。だから、まずは自分の実力を知って出来る範囲を考えることだ」


今、自分のことを分かっていないのは俺の方だ。

優しさなど、もっと言えば私情など、王族の私に必要ないのだ。

この気持ちは要らない。

エイリルの願いが叶って欲しいなど、彼女の笑顔が見てみたいなど、そんな気持ちは要らない。

絶対に要らないはずだ。

そう言い聞かせる自分がとても滑稽《こっけい》に感じた。
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