Sweet silent night

2.重なる災難!

 とぼとぼと歩いていると。
 ダッダッダッ――!
 妙に大きな足音が近づいてきて。
 ドンッ! と、誰かに思いきりつき飛ばされた。

「わあっ!」
 なんとか転ぶのはまぬがれたけど、あれ!?
 バッグが! さっきまで手に持ってたバッグがない!
 前を向いたら、ウソでしょ!?
 知らないオッサンが、あたしのバッグをつかんだまま、いちもくさんに逃げて行く。
「ちょ……ちょっと待ったぁーっ!」
 あたしは急いであとを追いかけようとしたけど、つき飛ばされた衝撃で思うように走れない。

 やだもう、サイテー! イヴはひとりぼっちで過ごさなきゃならなくなったうえ、あげくの果てにひったくりにまで遭うなんて!
 いくらなんでもふんだり蹴ったりじゃん。
 せっかくのクリスマスシーズンなのに、あたしには不幸と災難しか訪れないの?
「誰か、誰か助けてーっ!」
 そう必死の思いで叫んだ瞬間、近くの店からバッ! と人影があらわれ、逃げるオッサンに強烈なタックルを食らわせた。
 姿勢をくずしたオッサンをきっちり羽がい絞めにしてるのは、白いポンポンのついた赤いとんがり帽子をかぶった栗色の髪の男の子。
 このひと、サンタ姿のヒーロー???
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