二人の歩幅が揃うまで
「美味しい~!じゃがいもほくほく…!」
「火傷にお気をつけください。」
「あっ、そうですよね。はい!気をつけます!」
歯で一生懸命嚙まなくても、じゃがいもが口の中で形を失っていく。自分で作ろうとすると手間がかかる。その手間や待ち時間を考えると、今の自分ではとてもやろうとは思えない。
「毎日食べたいくらい美味しいです!」
「今日のポトフの仕込みは健人ですからね。もし声を掛けられそうだったら、直接言ってあげてもらえると嬉しいです。」
「えっ、あっ、そうだったんですか。てっきりオーナーかと。」
「前に教えたのは僕なんですけどね。でも今日は手伝ってないのにこの出来です。本当に器用な子なんですよね。」
「…すごいですね、本当に美味しい…。」
「湯本さんにそう言ってもらえたら、あの子もきっと喜びます。」
そう言って微笑むオーナーは叔父という話だったけれど、時折父親のような眼差しで彼を見ているように、綾乃には感じられた。
「さて、最後はエビグラタンですね。」
「はいっ!」
思っていたよりも大きめのエビがドンとのっている。これは食べ応えがありそうだ。
「いただきます。」
綾乃はスプーンで一口分すくいとり、少し冷ましてから口に運んだ。
* * *
給仕をしながら、時折オーナーと楽しそうに話す綾乃の横顔を見つめる。仕込みはやるものの、基本的にフロアを担当することが多いため、カウンターに入ることはほぼない。カウンター席が気に入っているらしい綾乃が、今日注文したものを頬張りながらオーナーと食事の感想を話す姿を仕事の隙に盗み見る。
(…多分、少し痩せた…?顔色は、ちょっと良くなったように見える、かな。)
毎週決まった曜日と時間に来ていた綾乃が先週、今週の土曜は来なかった。名前しか知らない自分は、心配を募らせる以外になかった。
(…良かった。美味しそうに食べてる。ポトフも。)
「火傷にお気をつけください。」
「あっ、そうですよね。はい!気をつけます!」
歯で一生懸命嚙まなくても、じゃがいもが口の中で形を失っていく。自分で作ろうとすると手間がかかる。その手間や待ち時間を考えると、今の自分ではとてもやろうとは思えない。
「毎日食べたいくらい美味しいです!」
「今日のポトフの仕込みは健人ですからね。もし声を掛けられそうだったら、直接言ってあげてもらえると嬉しいです。」
「えっ、あっ、そうだったんですか。てっきりオーナーかと。」
「前に教えたのは僕なんですけどね。でも今日は手伝ってないのにこの出来です。本当に器用な子なんですよね。」
「…すごいですね、本当に美味しい…。」
「湯本さんにそう言ってもらえたら、あの子もきっと喜びます。」
そう言って微笑むオーナーは叔父という話だったけれど、時折父親のような眼差しで彼を見ているように、綾乃には感じられた。
「さて、最後はエビグラタンですね。」
「はいっ!」
思っていたよりも大きめのエビがドンとのっている。これは食べ応えがありそうだ。
「いただきます。」
綾乃はスプーンで一口分すくいとり、少し冷ましてから口に運んだ。
* * *
給仕をしながら、時折オーナーと楽しそうに話す綾乃の横顔を見つめる。仕込みはやるものの、基本的にフロアを担当することが多いため、カウンターに入ることはほぼない。カウンター席が気に入っているらしい綾乃が、今日注文したものを頬張りながらオーナーと食事の感想を話す姿を仕事の隙に盗み見る。
(…多分、少し痩せた…?顔色は、ちょっと良くなったように見える、かな。)
毎週決まった曜日と時間に来ていた綾乃が先週、今週の土曜は来なかった。名前しか知らない自分は、心配を募らせる以外になかった。
(…良かった。美味しそうに食べてる。ポトフも。)