冴えないオレに、めちゃカワな詩音さんは「君の一番のファンは私だよ」と言ってくれた!

第8話 絵本研究部とオレ

 職員室にいるタヌキ先生にオレは絵本研究部への入部を知らせて部室に戻った。

 職員室に行く途中も部室への帰りも詩音さんが頭から離れない。
 オレの一番のファンだなんて。
 私が一番好きだなんて。
 詩音さんはオレのことをからかったかもしれないけど、嬉しすぎてオレはどうにかなっちゃいそうだった。

「そうかそうか。先生は大野くんがあそこを気に入ると思ったんだよ」

 少々タヌキに見透かされてる気がしたが、まあ詩音さんが目当てだとは思ってないだろう。

 活動が地味な感じの部活だから気に入ると思われたんだろうな。
 
 先輩たちは全然地味じゃないが。
 とくに憧れの詩音さん。

 もう一人部員がいるっていうんだけど、その生徒は男で幽霊部員らしくて滅多に来ないそうだ。


「始めは詩音目当てで男の仮入部がたくさん来たんだけどね。活動が地味だからみ〜んな他に行っちゃったんだよな」

 そういうと相楽先輩は絵本を開いて読み出した。
 真面目に活動してるんだな。

「私目当てなんてそんなわけないよ」

 詩音さんは苦笑いして手を横に小さく小さく振った。
 いやそんなことありますよ。
 現にここにオレがいますって。
 謙虚だなあ、詩音さんは。 

 
 詩音さんは飛び出す絵本を何度も開いたり閉じたりして観察している。
 はあ。詩音さんは本を持つ姿もサマになってて美しすぎる。
 目のやり場に困るなあ。

 しっかしちっとも先輩女子に慣れねえ。

 ポスター研究部にも女子はいましたが距離感が違う。
 オレも含めみんな人見知り気味だったのでこんな近くにいなかった。

 目の前だぞ。
 詩音さんが!

 そしてオレの横には相楽先輩が座っている。
 
  
 詩音さんが教えてくれた絵本研究部の活動内容はざっとこんな感じ。
 ❶絵本を図書室及び図書館から借りて来る。もしくは家の絵本を持ってくる。
 ❷読む。じっくり読む。
 ❸作者及び内容や描かれた背景などを調べる。手法や作者の思いを知る。いろんな角度から研究する。
 ❹レポートにまとめる。
 ❺自分でもオリジナルの絵本を創作してみる!

 わりとオレに合ってる気がするじゃないか。
 楽しそうだ。
 とくに自分でも絵本を創《つく》るって。
 絵本を読むんじゃなくて創るなんて発想がなかったな。

 オレ、はまると凝《こ》り性なんで。
 冴えないダメダメなオレですが。
 出来たものが良いか悪いかはあんまり関係なくて。
 小学生の時はプラモとか四駆作りとかけっこうハマった。
 出来は和正にはいつもかなわないが。
 またプラモ作ろうかな〜なんて思ってると、横の相楽先輩が絵本を差し出して来た。

 名作だ。
 王様とか出てくるやつ。

 久しぶりに読んだなあ。
 懐かしくて。
 面白かった。
 
 絵本研究部に来た一日目はあっという間にすぎた。


 オレの人生でかなり怒涛の一日でした。

 詩音さんが言った「付き合って」の真意がわからないまま。

 聞けないままオレは家に帰ることとなった。

 勇気が出なくて。
 情けねえなあ。
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