初恋は嘘つきだった
3話


 〇学校・正面玄関(夕方)


 制服・ブレザー姿の理央。
 
 放課後。
 理央、ドキドキしながら正面玄関を出る。
 辺りを見渡して、大志が来ていないか確認する理央。

理央(……今日はいないか)

 大志がいないことになぜか少し落ち込む理央。
 そんな自分に気づいてハッとする。

理央(なんで、来てくれること期待しているんだろう……違う違う)

 大志が迎えに来ていなかったことにショックを受けている自分の気持ちをかき消すかのように頭を左右に大きく振る理央。




 〇理央宅(夕方)

 自宅に帰宅する理央。

理央「ただいまー」
理央母「おかえりー」

 リビングに行くとリビングでくつろぐ大志の姿が。驚く理央。

理央「な、なんで大志くんがうちに?!」
理央母「今日から大志くんは我が家に住むことになったから」
理央「な、な、なんで?!」

 突然の宣言に驚く理央。

理央母「なんでって。二人は婚約しているんだから。不思議なことじゃないでしょ? 大志くんがね。久遠家に理央がいきなり暮らすのは理央が大変だからって。うちに住むことを提案してくれたのよ」
理央「なにも一緒に住まなくても……」

大志「俺がお願いしたんだ。理央は学校。俺は仕事だろ? 少しでも一緒にいたくてさ」

 社交辞令だと分かっていても、きゅんとしてしまう理央。


理央母「お母さんはね、理央と同じ部屋でもいいって思ったんだけどさ。お父さんが許してくれないから、大志くんにはお姉ちゃんの部屋を使ってもらうことにしたから」
理央「お姉ちゃんの? 帰ってきたらどうするの?」
理央母「駆け落ちしたんだから帰ってこないわよー」

 理央と理央母の会話をじっと聞き入る大志。表情は曇っている。(意味深な表情)

 
 〇リビング・夜ご飯(夜)

 リビングテーブルにはいつもより豪華なご飯が並べられている。
 仕事から帰宅した理央父、理央母と向かい合うように。理央と大志は隣同志で座っている。


理央父「では、改めまして。理央、大志くん。婚約おめでとう!」

 声高らかに言い放つ理央父。
 柔らかい笑顔を浮かべる大志。大志と対照的に顔を引きつらせる理央。

理央(婚約って、仮の婚約。なんだけどねえ。こんなに喜ばれたら言えないよね……)

 満面の笑みを浮かべて、かろやかに笑っている両親をちらりと見る理央。

理央父「大志くん。そのー、あれだ。千尋の件なのだが……」
大志「僕からも謝らせてください。いろいろありましたが……妹さんの理央さんと婚約だなんて。お父さんからしたら許せないと思うんです」
理央父「いや、そんな……」
大志「でも、これだけは分かってください。僕は理央さんが好きです」

「好き」と堂々と言われて胸が高鳴る理央。
 理央(冗談なのか、本気なのか……大志くんの考えていることが読めない)

 ストレートに伝えてくる大志に動揺する理央。

理央父「……」
理央母「……」
  
 ニヤリと微笑みながら理央を見つめる両親。
 その視線に居心地が悪くなった理央、立ち上がる。
 

理央「わ、私。お風呂入ってくる」

 動揺が隠しきれなくなった理央、お風呂に入ると宣言する。

 
 〇理央宅・洗面所(夜)

 洗面所の扉を閉めると同時に、その場にしゃがみ込む理央。

理央「はあー、もう。なんなの……」

 大志の甘い言葉に翻弄され続ける理央、深いため息を吐く。

 
 大志に言われた「好き」の言葉が頭の中を支配している理央。


 〇リビング

 お風呂から上がった理央、パジャマ姿。
 恐る恐るリビングのドアをあけると、テーブルの上はすでに片づけられている。

理央母「大志くんなら、二階よ? 部屋で休んでいるんじゃないかしら」
理央「……そう」

理央母「理央、最初はどうなることかと思ったけど。大志くん、いい人じゃない? うちの家業とか関係なしにさ。食器洗ったのだって大志君なのよ?」
理央「え、」

 綺麗に洗ってある食器の絵。

 
理央母「ふふっ、実家ではお手伝いさんがやってくれたんだろうね。なんだかぎこちなくて。でも一生懸命でかわいかったよ?」

 食器洗いをする大志を想像する理央。
 一生懸命に食器洗いをする大志のデフォルメ絵。

理央(御曹司のくせに、家事とかするんだ……自ら食器洗いするなんてポイント高すぎる。家では家政婦がやるんだろうに。大志くんを知れば知るほど、惹かれていく……)

 

理央母「御曹司だから亭主関白で、家のことなんて何もしないと思ってたもの。いろいろ率先してやってくれるし。いい旦那さんになるんじゃないかしら?」
理央「だ、旦那って……」
理央母「今は婚約者だけど、いずれは旦那さんでしょ?」

 にこりと笑う理央母、とても嬉しそう。
 嬉しそうな母を見て、本当のことは言えなくなる理央。



 〇理央宅・自室(夜)

 自室のドアを開ける。
 誰もいないはずに自室に、大志の姿が。

理央「な、なんでいるんですか?!」
 
 大志は姉が使ってた部屋にいると思っていたので驚く理央。

大志「奥様を待ってたよ」
理央「あの、そのやめてもらえますか?」
大志「なにを?」
理央「そうやって……からかうことです」

 大志、不思議そうにきょとんとしている。

大志「からかってないよ?」

理央(からかってない? ってことは今までの言葉は本気で……ってだめだめ。惑わされちゃだめだ)
 
理央「わ、私。恋愛とか初心者なので。その、大志くんがいう言葉は刺激が強いんです!」
大志「ははっ。なんだー。そういうことかー」
理央「はい、やめてもらえると助かります」
大志「じゃあー、これは?」

 大志の声と同時に手のひらにぬくもりを感じる理央。
 大志と理央、恋人つなぎをしている。

理央「こ、こっ、」

 動揺するも、不思議と嫌な気持ちにはなっていないことに気づく理央。

理央「これは……セーフかもです」
大志「……理央、かわいいんだけど」
理央「そ、それはだめです」
大志「手つなぎはおっけーで、可愛いはだめなの?」
理央「可愛いとか言われ慣れてないから……ドキドキしちゃうんです」
大志「……はあ、」

 大志は分かりやすくため息をつく。
大志(なにそれ。可愛すぎるだろ……)

大志「それってわざと?」
理央「え、」
大志「そんなこと言われたら、かわいくて仕方ないんだけど? わざとやってんのかなーって」

大志(恥じらいながらそんなこと言われたら、高校生の男なんて、簡単に好きになっちまうだろ)
 
理央「わ、わざとなわけないですよ!」
大志「はあ。素でそれかー」

大志(そんな可愛い表情。他の男に見せたくないな)
 両手で顔を覆う大志。
 
理央「え、 え、?」
大志「決めた。毎日迎えに行くわ」

大志(理央の学校の奴らに、俺の存在を知ら締めとかないと)
 
理央「毎日って……大志くん、仕事でしょ?」
大志「……はっ。そうだよなー。毎日は抜けられないよなー」

大志(毎日送り迎えしたいくらいだけど、さすがに毎日仕事抜けるわけにもいかないしなー)
 首をくねりながら悩まし気にする大志。
 その様子がなんだか、可愛く見えて微笑む理央。

理央「ふふっ」
大志「……」

 理央の首筋に手をあてて顔を近づけていく。
 唇が触れそうな距離でぴたりと止まる。

大志(……っ! 俺何してんだ?!)

 理央の可愛さに無意識でキスしようとしていた大志。
 自分の行動に驚いて顔を背ける。

大志(我慢できないとかださすぎるな。俺)

理央「た、大志くん?!」

 大志がなにをしようとしていたのか、全くわかっていない理央。
 その様子に安心したような。がっかりしたような。複雑な気持ちになる大志。

大志「はあ、このままだと危ないから寝るわ」
理央「……危ないの? うん? おやすみなさい」

 不思議そうにしながらも、大志のいう「危ない」の本当に意味を理解していない理央。
 
大志「おやすみ……」

 ぱたんとドアが閉まる。

 
大志「このシチュエーションで我慢できる俺。偉いわ……」

 ドアに背中を押しあてて、聞こえないくらいの声量で呟く大志。

 大志(さて。俺はいつまで手を出さずに、我慢できることやら……)

 
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