一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。
第一章 最初の年
「君とは一年後に離婚するつもりだ」

 結婚して早々、夫であるマグナス・ドルピード伯爵令息は私にそのようなことを言ってきた。
 その内容には、当然驚いている。離婚宣言――それも期限をきっちりと決めた離婚とは、一体どういうことなのだろうか。理解が追いつかない。

「マグナス様、私はあなたが何を言っているのかがわかりません。一年後に離婚するなんて、一体どういうことですか?」
「順を追って話をしよう。まず前提として、これは親が決めた結婚だ。それは君もよく理解しているだろう。我々は、まだお互いのことをほとんど知らない」
「それは、そうですけれど……」

 マグナス様の言う通り、私と彼との結婚は親同士が全てを決めたものである。
 そこに私達の意思は一切関与していない。それ所かほとんど会うこともなく、結婚することになったのだ。
 しかしだからといって、一年後に離婚するなどということにはならないだろう。それならそもそも、結婚した意味がわからない。

「そもそもの話ではあるが、私は結婚というものに興味がなかった。許されることなら、独身でいたいとそう思っていたのだ。しかし、父上や母上は強情だった。私に結婚を強要したのだ」
「強要……」
「もちろん、私も両親に対して育ててもらった恩義を感じている。故に最終的にはこの婚約についても受け入れることにした。両親への義理を果たすために……ただそれは一年だ。それ以上、あの二人の要求に従うつもりはない」
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