一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。
 マグナス様の口振りからは、両親に対する棘のようなものが感じられた。
 何かしらの不和があることは理解できた。今回の結婚は、それが解消されることなく決まってしまったのだろう。彼の無茶な要求の根底には、それが関係している気がする。

「君及びカルロム伯爵家への不義理は申し訳ないと思っている。特に君の経歴を傷つけることになるという点については……君の再婚に関しては、できる限り助力するつもりだ」
「離婚するという意思は、どうやら固そうですね……」
「……逆に問いたいと思っていたが、君は今回の婚約についてどう考えている?」
「それは……」

 マグナス様からの問いかけに、私は言葉を詰まらせることになった。
 実の所、私には彼の気持ちが理解できた。私も、この親同士が決めた結婚に対して不満を抱いていない訳ではないのだ。

 別に恋愛結婚を望んでいるという訳ではない。貴族の世界でそんなものが望めないことなんて、私もわかっている。
 しかしながら、今回の結婚はいくらなんでも強引だったと思ってしまう。こうして面と向かって彼と話せるのが、今までなかったことが何よりの証左だ。

 それに私も、両親に対して反発する気持ちがあった。
 あの二人からのこれまでの扱われ方には不満がある。そういう部分に関しても、私は彼と同じ気持ちなのかもしれない。
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