一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。
「不満がないという訳ではありません。ただ別に離婚したいとまでは思っていませんでした。でも、あなたがそれを望んでいるなら特に反対するつもりはありません」
「そう言ってもらえると、こちらとしてもありがたい」

 マグナス様の主張は、かなり身勝手なものであるように思える。
 だが断る程強い想いも私にはない。利益が得られるという訳でもないが、彼がそうしたいならそうすればいいと思えてしまう。

「つまりこれはある種の契約結婚ということになりますね?」
「ああ、そういう認識でいいだろう。契約書でも作ろうか」
「いえ、そういうものがあると後で不利になるのではありませんか?」
「……確かにそうだな」

 私の言葉に、マグナス様はゆっくりと頷いた。
 どうやら、彼は真面目な人であるらしい。その言動から、それが読み取れる。
 そんな彼が反発する程、両親との間に溝があるのだろうか。それが私は少々気になった。

「一年後、我々はそりが合わなかったという理由で離婚する。それでいいだろうか」
「ええ、構いません」

 一年で離婚する訳だし、彼とは適切な距離感で接するべきだろう。そう判断して、私はマグナス様と両親の関係を特に追及することはしなかった。
 お互いに深入りはしない。一種の契約結婚なのだから、そのくらいの関係の方がいいだろう。
 こうして私達は、一年間を期限に結婚生活を送ることになったのだった。
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