異世界騎士の忠誠恋
 歌音は、ベッドでぼんやりしていた。彼は、戻ってくる。大丈夫。だって、「好き」「カノン、愛してる」って……たくさん、たくさん言ってキスして……彼に愛されて……。
 
 パタン。

 寝室に戻ってきた彼を見ると。私を一瞬見た、と思ったが。クローゼットの引き出しの服を、がさがさと取り出す。そして、カバンにいれ始めた。
 寝室をでて、リビングでも引き出しの開く音。
 歌音は、慌てて彼のいるリビングへ行く。

 「あの、ハロルドさん? どうしたの? ねぇ? どうしたの?」
 「……しばらく……頭を冷やしてきます」
 「荷物、なんで? お部屋、戻ろう? 話し……」
 「また、連絡します。カノン」

 荷物を持って、出て行ってしまった。
 話しが出来ないまま……歌音は、ハロルドと話しができると思った。ベッドで、たくさん謝ってきた彼に。なんで謝ってきたのか? 私が、彼をまた責めたのだろうと……彼に謝りたかった。気持ちを、また、伝えたいって。彼を好きで、愛してるって。

 カノンの居る部屋から、バイト先の親方殿に頼み込んで部屋を借りた。
 親方殿も若殿も、深く尋ねなかった。

 「お前は良く食うから、飯代だけさっぴくからな」
 「ありがとうございます」
 「まぁ、仕事は休んでねぇし……無理だけはすんな」
 「はい」

 それから、仕事と用意された食事を親父殿たちと食べる毎日。バイト先の寮は、親父殿と若殿の奥方たちがやり繰りしてくれている。 騎士の時の、寮みたいだった。
 
 夜になると、カノンを抱いたあの夜を想い出してしまう。昂ぶったモノを、(しず)める毎日。
 「カノン」「カノン、好きだ」「愛してる」と何度も言って、彼女を……カノンと愛し合っている感覚が、どんどんと。日に日に甦る。感覚が抱いていた時以上に、激しい。
 彼女が、目覚めた時にキスをしてくれた柔らかい唇。瞳。沈んでいない、瞳。俺を見ていた、俺を……。
 
 「カノン……逢いたい……」

 騎士として、いた自分。
 俺は、騎士だ……よな? カノンを……疑問が涌き起こる。
 フリードが、「オレは王子じゃないし、お前も騎士じゃないんだよ」と言った言葉。「この世界」と。世界? 騎士、じゃない?
 彼は、戸籍があって。アヤネ殿と結婚をする予定で……俺は、カノンが好きで。カノンの傍にいたくて……彼女の笑顔が見たくて、彼女をあ……愛している。

 「俺は、騎士じゃない? では、なんだ?」

 彼女の傍にいて、笑顔を見て、愛していると毎日言って。彼女を愛して……ずっとずっと、傍にいたい。笑顔をなくさないように、傍に。

 ーーそばに、いて、いいのか? 俺は? 彼女を傷付けているのに? ーー

 悪い考えと、向かい始める。夜になると、彼女を思い出してはこの状態。もう、1週間は続いている。
 カノンの部屋から出て、1度連絡した。親父殿の部屋を借りています。仕事も休んでいません。と。
 彼女からの返事は、『話しをしたい』と。
 返事ができない。彼女の話しが恐い。きっと、傍にいて欲しくないと言われるから。俺は、もう、傍にいたら……。


 部屋に1人。いつ帰ってきてもいいように、夕飯をたっぷり用意しては、どんどん余って冷凍庫へとしまったり。お姉ちゃん達にお裾分けしている。
 綾音ちゃんは、居場所が分からないよりは、って言っていたけど。やっぱり、怒っているというか……。フリードさんは、「アイツ、バカだから……カノンちゃんを好きなんだけど」って、困った顔。
 ハロルドさんは、嘘は言わないって分かっていたのに。あんな言い方した、私がいけなかった。

 私も、前にお酒の勢いで彼にたくさん甘えて……キスせがんで。 
 「お姉ちゃん。ハロルドさんのバイト先、行ったら……迷惑、だよね?」
 「んー。今は、歌音の気持ちが焦っているでしょ?」
 「……うん。逢いたくて、しょうがない……」
 「だよね? ハロルドは、歌音の話しがしたいに過剰になってないかな?」
 「話し? 私は、好きって。ちゃんと言いたくて」
 「アイツが、暴走する勘違い野郎だって。忘れてない?」
 「……あっ……もしかして……」

 あり得た。今までの、行動、言動。暴走のオンパレード。綾音やフリードも、止めるのが大変だった。
 困った歌音に、綾音がメッセージの内容をどう送るか教えてくれた。

 「えっと、これでいい? 綾音ちゃん」
 「そそっ、でぇ、この画面に向かって」
 「~~っ、恥ずかしいよぉ……」
 「そこはぁ、ヤル!!」

 綾音ちゃん。こういうの、フリードさんとしていたんだ……スゴイ。尊敬しちゃう。
 動画に切り換え、画面に向かって一生懸命。ヤリキッタ。

 「ハイ、送信~~!!」
 「あっ、あぁ!! 綾音ちゃん、コレ、恥ずかしすぎるぅ」

 綾音のご満悦。

 
 仕事が終わったハロルドのスマホに、メッセージが届いた。
 カノンからだった。
 
 【動画が届いています】

 「むっ?」
 「どうした? ハル?」
 「若殿……この、動画というのは……」
 「あぁ、この三角を押すと……」

 【ハロルドさん、あの夜。私。忘れられないの】
 【あなたを好き。お願い、寂しい】

 「……あぁ、ハル……音がっ……」

 音量がかなり大きく、カノンの可愛い声が周りのバイトの男どもが聞いていた。
 若殿が、両手を合わせスマンと謝っていた。
 ハロルドは……押していた。動画を……確かめるように、2回。3回。さすがに、4回目には、若殿たちが制した。

 「もっ、もう、やめろ!! ハル!! 今、ここではまずい!!」
 「ハルさん!! 帰ってあげてくださいよ!!」
 「えっ、あっ、はい……カノンの部屋に、帰ります……」
 
 ハロルドは、親父殿に「カノンの部屋に戻ります!! ありがとうございます!!」と帰った。
 親父殿は、帰ってきた若。息子に聞いたら、大爆笑していた。

 部屋に久し振りに戻った。
 あぁ、カノン!! 愛している!! 逢いたい!!

 リビングのソファに、彼女がいた。

 「えっ、あの、ハロルドさん?」
 「カノン!! 愛してる!! 寂しい想いさせて、ごめん!!」
 「さっき、送ったばか……んっっ!! ぁ、んっ、ハロルドさぁん……」
 「はぁ……カノン、愛してる……んんっ、んぅ!!」
 
 帰ってきてから彼女にキスをし続ける。
 動画メッセージ送って、30分くらいしか経っていなかった気がしたのだが……。
 もう、彼は帰ってきていて。キスをしていて。私を見てくれて。
 彼の瞳をみると、熱い眼差しでみつめている。
 頬を優しく撫でて、ベッドへと抱き上げられていく。キスを頬や首筋、おでこと優しくしてくれる。
 
 帰ってきた日は、たくさんキスしながら抱き締めてくれた。

 「カノン。俺は、酒の力ではなく……あなたに気持ちを言いたかったんです」
 「ハロルドさん。私も、あんな言い方して。ごめん」
 「酒癖悪いと、フリードに言われていたのに。浴びるように呑んだので。カノン、酒なしで。貴女に言いたい」
 「うん」
 「好きです。愛してる。ずっと、カノンの傍にいたい」
 「ハロルドさん!! 私も、好き!! 傍にいて欲しい!!」

 気持ちを伝え合った後、ハロルドに仕事終わった直後に動画メッセージを何度も見たと。大音量で、何度も……若殿に止められたと。 彼女が、顔を真っ赤にして胸に顔を埋める。「もぅ、あぁいうの恥ずかしいからぁ」っと。可愛い声。

 「カノン。可愛い……もっと、欲しいです。俺」
 「えっ? 欲しいって、キス?」
 「そのぉ……可愛いカノンの動画」
 「……ハロルドさんだけで、見て……くれる?」
 
 変な事を覚えたハロルド。それは、フリードも同じだったことを、彼は……あとで、知った。
 「アレは良いです!!」「だよねぇ!!」と互いに語り合うまでになった。
 そして、歌音はハロルドから、欲しい歌音の動画をたくさん受けることになった。どこから、そんな情報を仕入れたり得たりしているか……聞きたくない。聞かない方が、いいよね? ハロルドさん?
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