異世界騎士の忠誠恋
【数ヶ月後】
夏が過ぎ、肌寒い季節が本格的にやってきた。ハロルドたちにとって、初めての冬。
外での土木仕事では、寒さで手が辛くなりやすい。ただ、ハロルドにとっては、もっともっと寒い季節を過ごしたりしていた事もあったので特に辛いとは思っていなかった。
女神様がタッパーを新しいのにしてくれ、温かい弁当を食べれるようになった。保温ジャーだ。
「今日も愛妻弁当か?」
「……あいさい……」
「愛する奥さんの弁当じゃねぇのか? 一緒に暮らしてんだし」
「えっ? いや……女神様は……お、おくっおくが、おくがっ」
毎度のように、昼になるとハロルドの美味しい弁当を一口つまもうと親父殿や若殿たちがやってくる。そして、「愛妻弁当いいなぁ」と、周りからからかわれる。そのたびに、言われた言葉の意味を知ったハロルドは戸惑う。
「女神様は……一緒にはいますが……その、俺の妻では……」
「ふぅ~ん」
周りの男どもは、にやにやと見ている。
違う!! 女神様とは、そのような関係では……。
彼のなかで、必死に毎晩繰り広げられる……女神様からの懇願。つまり、彼にとっては拷問の状態を想い出してしまった。
彼女と同衾(ただ一緒に寝るだけ)するようになって数ヶ月。眠れるようになってきてはいたが、彼女が寝返りを打つ時に柔らかい感触が増したり。花の匂いが鼻くうをくすぐる。
「そういや……もうすぐクリスマスだな?」
「クリスマス?」
いつの間にか話題が変わっていたらしい。初めて聞いた、クリスマスという単語。昼飯を食べながら、プレゼントを用意しないとなどと言ったり、一緒に過ごす相手がいない、などと話している。
クリスマス、というのは。家族や恋人などと一緒に過ごし、ケーキ食べたり、プレゼントを渡したりすると。大事な人に、告白したりする者もいるという。
今日も一仕事終え、部屋に帰っていつもの様にしていた。
隣のフリードがバイトを終えて、部屋にやってきた。
最近、ゆっくり話しが出来ていなかったので、2人で色々と話した。フリードもアヤネ殿にプレゼントを渡すと。
「王子は、アヤネ殿にプレゼントは何を?」
「それはアヤネちゃんだけが分かれば良いから。お前に話す訳ないだろ?」
「そうですが……俺は女神様に、何をプレゼントすれば……」
大きな犬が、小さくなって耳を垂れ、しっぽがへたっている。
こんな幻覚、オレまで見えるようになるって危険じゃないか? って、フリードは考える。
部屋にあった雑誌を見せて、「ほら、女性だとこうゆうのじゃない?」とフリードに見せる。
ハロルドはファッション誌の『クリスマス特集』というのを見ていく。漢字はあまり読めないが、写真が色々と載っていた。女神様はこういうのをたまに読んではいたが……。ふと、読んでいた時のことを思い出された。
『このアクセサリーかわいい』
たしか、この雑誌とかいうので……。パラパラとページを捲る。
「あっ!!」
「どうかした?」
「い、いえ」
「まぁ、選んでも……あまり変なのは……」
すでに、聞いていない。じっと写真と文字を必死に覚え始めている。なにやらブツブツ言いながら、手は文字を書くように動かしている。
何だか不安だけか募った。「余計なこと、言ったかなぁ」とフリードは言う。
バイト代を貰ったハロルドは、部屋の箱に入れていた今までのバイト代をかぞえてみた。
女神様が「かわいい」と言っていたアクセサリー。売っていそうな店を、若殿や一緒に働く仲間に聴いた。「それ、高いんじゃないか?」とは言われたが。女神様への今までの感謝を贈りたい。
教えて貰った店に行き、女神様に似合う色のアクセサリーを選んだ。プレゼント用として包んで貰った。
クリスマスまで、ハロルドは自分の引き出しに大事にしまって置いた。
クリスマスの日。
ハロルドは、初めて女神様とケーキを食べた。ジンジャークッキーという、クッキーも食べた。
「女神様……えっと……」
「どうしたの? ハロルドさん」
「お渡ししたいものが……」
「……?……」
女神様はきっと、いや、ぜったいにぜーたいに喜んでくださる。変なところで自信がついてしまった男は、引き出しから小さな箱を持って彼女の前で跪いた。
箱を彼女の前に掲げるようにして出す。
「ぜひ、女神様に!!」
「……これ……どうしたの?」
「女神様が以前見ていたアクセサリーで。似合う色を探しました!!」
「………………」
「女神さ、ま?」
沈黙が重たく感じる。俺は何か間違っただろうか? 女神様の瞳が曇って見える。何故だ? 女神様は、違うものが? 中を見て貰えれば!!
ガサガサと包み紙を外し、箱からケースをとり、アクセサリーを見せた。
「コレです!!」
「……ハロルドさん……」
「は、はい!!」
「返してきて」
「へっ? 今、なんと?」
「わたしは……そういうの欲しいわけじゃない」
返してきて? いらない?
そんなはずでは……ハロルドの頭の中は、女神様が自分を見てくれていないことや、アクセサリーを一目見て喜ぶと思ったら……全く違う反応ばかりで。
どんどん混乱していき、焦り始める。そして、「女神様への今までのお礼を兼ねて」「女神様への献上品」「女神様」「女神様」と口からどんどん言葉が出てくる。
歌音は、いまだに彼から欲しい言葉が贈られない。彼が言いつのっている時に、「わたしは女神様じゃない」と必死に言っても聞く耳をもってくれない。
立ち上がって、ハロルドの目の前から寝室へと入った。
ひとり取り残された男は、うなだれたまま……「なぜだ?」「女神様は欲しくないのか?」「俺はただ」「女神様」と、受け取って貰えなかったアクセサリーをぼんやりと眺めていた。
夏が過ぎ、肌寒い季節が本格的にやってきた。ハロルドたちにとって、初めての冬。
外での土木仕事では、寒さで手が辛くなりやすい。ただ、ハロルドにとっては、もっともっと寒い季節を過ごしたりしていた事もあったので特に辛いとは思っていなかった。
女神様がタッパーを新しいのにしてくれ、温かい弁当を食べれるようになった。保温ジャーだ。
「今日も愛妻弁当か?」
「……あいさい……」
「愛する奥さんの弁当じゃねぇのか? 一緒に暮らしてんだし」
「えっ? いや……女神様は……お、おくっおくが、おくがっ」
毎度のように、昼になるとハロルドの美味しい弁当を一口つまもうと親父殿や若殿たちがやってくる。そして、「愛妻弁当いいなぁ」と、周りからからかわれる。そのたびに、言われた言葉の意味を知ったハロルドは戸惑う。
「女神様は……一緒にはいますが……その、俺の妻では……」
「ふぅ~ん」
周りの男どもは、にやにやと見ている。
違う!! 女神様とは、そのような関係では……。
彼のなかで、必死に毎晩繰り広げられる……女神様からの懇願。つまり、彼にとっては拷問の状態を想い出してしまった。
彼女と同衾(ただ一緒に寝るだけ)するようになって数ヶ月。眠れるようになってきてはいたが、彼女が寝返りを打つ時に柔らかい感触が増したり。花の匂いが鼻くうをくすぐる。
「そういや……もうすぐクリスマスだな?」
「クリスマス?」
いつの間にか話題が変わっていたらしい。初めて聞いた、クリスマスという単語。昼飯を食べながら、プレゼントを用意しないとなどと言ったり、一緒に過ごす相手がいない、などと話している。
クリスマス、というのは。家族や恋人などと一緒に過ごし、ケーキ食べたり、プレゼントを渡したりすると。大事な人に、告白したりする者もいるという。
今日も一仕事終え、部屋に帰っていつもの様にしていた。
隣のフリードがバイトを終えて、部屋にやってきた。
最近、ゆっくり話しが出来ていなかったので、2人で色々と話した。フリードもアヤネ殿にプレゼントを渡すと。
「王子は、アヤネ殿にプレゼントは何を?」
「それはアヤネちゃんだけが分かれば良いから。お前に話す訳ないだろ?」
「そうですが……俺は女神様に、何をプレゼントすれば……」
大きな犬が、小さくなって耳を垂れ、しっぽがへたっている。
こんな幻覚、オレまで見えるようになるって危険じゃないか? って、フリードは考える。
部屋にあった雑誌を見せて、「ほら、女性だとこうゆうのじゃない?」とフリードに見せる。
ハロルドはファッション誌の『クリスマス特集』というのを見ていく。漢字はあまり読めないが、写真が色々と載っていた。女神様はこういうのをたまに読んではいたが……。ふと、読んでいた時のことを思い出された。
『このアクセサリーかわいい』
たしか、この雑誌とかいうので……。パラパラとページを捲る。
「あっ!!」
「どうかした?」
「い、いえ」
「まぁ、選んでも……あまり変なのは……」
すでに、聞いていない。じっと写真と文字を必死に覚え始めている。なにやらブツブツ言いながら、手は文字を書くように動かしている。
何だか不安だけか募った。「余計なこと、言ったかなぁ」とフリードは言う。
バイト代を貰ったハロルドは、部屋の箱に入れていた今までのバイト代をかぞえてみた。
女神様が「かわいい」と言っていたアクセサリー。売っていそうな店を、若殿や一緒に働く仲間に聴いた。「それ、高いんじゃないか?」とは言われたが。女神様への今までの感謝を贈りたい。
教えて貰った店に行き、女神様に似合う色のアクセサリーを選んだ。プレゼント用として包んで貰った。
クリスマスまで、ハロルドは自分の引き出しに大事にしまって置いた。
クリスマスの日。
ハロルドは、初めて女神様とケーキを食べた。ジンジャークッキーという、クッキーも食べた。
「女神様……えっと……」
「どうしたの? ハロルドさん」
「お渡ししたいものが……」
「……?……」
女神様はきっと、いや、ぜったいにぜーたいに喜んでくださる。変なところで自信がついてしまった男は、引き出しから小さな箱を持って彼女の前で跪いた。
箱を彼女の前に掲げるようにして出す。
「ぜひ、女神様に!!」
「……これ……どうしたの?」
「女神様が以前見ていたアクセサリーで。似合う色を探しました!!」
「………………」
「女神さ、ま?」
沈黙が重たく感じる。俺は何か間違っただろうか? 女神様の瞳が曇って見える。何故だ? 女神様は、違うものが? 中を見て貰えれば!!
ガサガサと包み紙を外し、箱からケースをとり、アクセサリーを見せた。
「コレです!!」
「……ハロルドさん……」
「は、はい!!」
「返してきて」
「へっ? 今、なんと?」
「わたしは……そういうの欲しいわけじゃない」
返してきて? いらない?
そんなはずでは……ハロルドの頭の中は、女神様が自分を見てくれていないことや、アクセサリーを一目見て喜ぶと思ったら……全く違う反応ばかりで。
どんどん混乱していき、焦り始める。そして、「女神様への今までのお礼を兼ねて」「女神様への献上品」「女神様」「女神様」と口からどんどん言葉が出てくる。
歌音は、いまだに彼から欲しい言葉が贈られない。彼が言いつのっている時に、「わたしは女神様じゃない」と必死に言っても聞く耳をもってくれない。
立ち上がって、ハロルドの目の前から寝室へと入った。
ひとり取り残された男は、うなだれたまま……「なぜだ?」「女神様は欲しくないのか?」「俺はただ」「女神様」と、受け取って貰えなかったアクセサリーをぼんやりと眺めていた。