知人の紹介で
「大した話じゃないですよ? 元カノが浮気したっていうどこにでもあるような理由です。彼女が他の男とベッドにいるところを偶然目撃してしまって。それがトラウマになって誰かと恋愛関係になるのを避けるようになったんです」
きっとどこにでもあるような浮気話だが、そのときの圭吾は本当にとてもショックを受けたのだ。自分に好きだと言うその口で別の男にも同じことを囁いていたのかと思うと虫唾が走った。ものすごく汚らわしいものを見せられた気分だった。こんな思いをするくらいなら、恋なんてしないほうがマシだとまで思った。
だから、その一件以来、圭吾は恋愛に発展し得る関係は一切シャットアウトしたのだ。好意を向けられようものなら、その気がないとわかるようにさっさと距離を置いてその人物と離れた。もちろん自分から誰かに近寄ることもなかった。
そんな中で真由美は唯一圭吾が恋愛に発展してもいい、いや、発展してみたいと思えた人だ。
「そうだったんだね。でも、それは大したことだよ。恋人に裏切られれば、つらいに決まってる。ごめんね、嫌なこと訊いて」
「いえ、いずれは話さないとって思ってましたから」
「つらいのに話してくれて、ありがとう。ねえ、岡倉くんはそのときちゃんと泣けた?」
泣きたくなるくらいつらい出来事ではあったが、圭吾はあの当時ただの一度も泣けなかった。あまりにもショックが大きくて涙を流すことすらできなかったのだ。
「いや、ショックがでかすぎて泣けなかったですね」
「そっか。じゃあ、今泣いとく?」
真由美のその言い方が随分と軽かったから、圭吾は思わず笑ってしまった。
「はは。何ですか、その一杯いっとく? みたいなノリ」
「そのくらい気軽に泣いたっていいじゃんってことだよ」
「そうですね。それでいいのかもしれないですね。でも、もうそういう段階は過ぎたから大丈夫ですよ」
「そう? じゃあさ、次のステージいってみる?」
「次?」
圭吾が訊き返すと真由美は急に圭吾に真っ直ぐ向き直って、ビシッと背筋を伸ばした。
きっとどこにでもあるような浮気話だが、そのときの圭吾は本当にとてもショックを受けたのだ。自分に好きだと言うその口で別の男にも同じことを囁いていたのかと思うと虫唾が走った。ものすごく汚らわしいものを見せられた気分だった。こんな思いをするくらいなら、恋なんてしないほうがマシだとまで思った。
だから、その一件以来、圭吾は恋愛に発展し得る関係は一切シャットアウトしたのだ。好意を向けられようものなら、その気がないとわかるようにさっさと距離を置いてその人物と離れた。もちろん自分から誰かに近寄ることもなかった。
そんな中で真由美は唯一圭吾が恋愛に発展してもいい、いや、発展してみたいと思えた人だ。
「そうだったんだね。でも、それは大したことだよ。恋人に裏切られれば、つらいに決まってる。ごめんね、嫌なこと訊いて」
「いえ、いずれは話さないとって思ってましたから」
「つらいのに話してくれて、ありがとう。ねえ、岡倉くんはそのときちゃんと泣けた?」
泣きたくなるくらいつらい出来事ではあったが、圭吾はあの当時ただの一度も泣けなかった。あまりにもショックが大きくて涙を流すことすらできなかったのだ。
「いや、ショックがでかすぎて泣けなかったですね」
「そっか。じゃあ、今泣いとく?」
真由美のその言い方が随分と軽かったから、圭吾は思わず笑ってしまった。
「はは。何ですか、その一杯いっとく? みたいなノリ」
「そのくらい気軽に泣いたっていいじゃんってことだよ」
「そうですね。それでいいのかもしれないですね。でも、もうそういう段階は過ぎたから大丈夫ですよ」
「そう? じゃあさ、次のステージいってみる?」
「次?」
圭吾が訊き返すと真由美は急に圭吾に真っ直ぐ向き直って、ビシッと背筋を伸ばした。