知人の紹介で
「岡倉くん。内定おめでとう」
「ありがとうございます。いやー、先輩方のおかげですよ」
「何言ってるの。岡倉くんの実力だよ。でもね、社会人と学生じゃ違うから、ここからはしっかり先輩の言うこと聞いて努力しないとダメだぞ?」
「はい! ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします!」
「ははは。やっぱり、岡倉くんはいいねー。期待してるよ。よし、じゃあ、早速コミュニケーション能力を鍛える一環として、岡倉くんには今からあるミッションを達成してもらおうかな」
「え、はい。頑張ります!」
「おう、頑張れよ。それじゃあ、今からここを通った女性をナンパしてこい」

 圭吾はたっぷりと間をおいてから「え?」と発した。確かにナンパを成功させるには会話のスキルがいるのかもしれないが、だからといってそれでコミュニケーション能力を鍛えるというのはおかしいだろう。どう考えてもこれは後輩をからかって遊んでいる。

 きっと他の内定者たちはこういうことがあるとわかっていて逃げたのだろう。知っているのなら自分にも教えてほしかった。だが、今さらそれを言ってもどうしようもない。ここに来てしまった以上はもう自分で切り抜けるしかないのだ。
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