本の虫は恋煩う。




 時が経過し、夏祭り当日。
 私は野山さんの家で着付けをしてもらいに行った。

『お、お邪魔します…』 

 よその家に上がることなんて人生初だったから、玄関から先に入るまでにかなりおどおどしてしまったが野山さんはからかったりはしてこなかった。

 「あはは、緊張しすぎだって、リラックスリラックス」

 私のカクカクした動きに爆笑した絵茉にバシバシと背中を叩かれ、ふと力が抜けた。
 玄関に上がると、奥から女性が歩いてきた。

「あら、いらっしゃい。
 絵茉のお友達?」 
「お母さん!
 そうだよ、弥上世那ちゃんっていうの!」
「可愛らしいわね」

 美しく微笑む若い女性は、野山さんのお母さんだったらしい。
 褒められ慣れていない私は肩を縮こませる。

『いえ、そんな滅相もないです…』

 野山さんに連れられて入ったのは和室の部屋だった。
 畳の香りが鼻を通り抜けていく。
 うちはフローリングのみだから和室って新鮮だな。

「さ、着付けしようか。
 肌着以外脱げる?」
『あっ、う、うん』

 私は肌着以外と言われて少しだけ焦った。
 でも、多分大丈夫だろう、長い下着着てるし。
ソロソロと服を脱ぐと畳んで端に置く。

「世那ちゃんには水色の着物が似合うと思ったんだよねー」

 野山さんは胸を張って、じゃじゃーん!と効果音と共にヒラリと着物を披露した。


『わ、可愛い、蝶々だ』


 水色の浴衣に綺麗な金と銀の蝶々の模様が美しい。
 ほう、と見惚れていると野山さんはメラメラと燃えていた。


「可愛くして恵の度肝を抜いてやろ!」
『へっ、え、あ、うん…?』


 つい返事をしてしまったけど、度肝を抜くとは一体どういう意味なんだろうか。

 その後、野山さんは手際よく私の着付けを進めると、手早くメイクやヘアセットもしてくれた。


「できた!」

『凄い…、可愛い』
 

鏡を見て思わず驚いた。
髪もアイロンでフワフワだし、メイクのおかげで少しだけ可愛くなれた気がした。
 その後自分で着物に着替えた絵麻ちゃん。
 白に桜模様の着物がよく似合っていてとても可愛い。

絵麻ちゃんはにこにこ笑顔で私の腕を組む。


「さてと、恵を驚かしに行くよ〜!」




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