ひとりぼっち歌姫とヘッドフォンの彼
ヘッドフォンの彼

「あー、うん。 いったん止めよう」


 軽音部の大鳥(おおとり)部長が爽やかな笑顔で言って、音楽室に響いていた音楽が止められた。
 音楽はまだ1番のサビに入ったところだった。
 ステージ上の私はマイクをギュッと握りしめて、そこに立ち続けるだけで精一杯で。
 そんな私を、前から三段目に作られた審査員席のど真ん中に座る大鳥部長が、元々細い目をさらに細めて見ている。

「……大丈夫? 震えてるけど」

 部長の両サイドにそれぞれ二人ずつ座る幹部たちは、私を横目で見てヒソヒソと話し、クスクスと笑っている。

「あ……の……」

 私は部長の後ろにあるギターケースに目くばせして、ゴクンと恐怖を飲み込んだ。

「……やっぱり……ギターを持たせてくれませんか……?」

 私に強く握られて熱くなったマイクが、か細く震えた声を拾って音楽室に情けなく響かせる。
< 2 / 83 >

この作品をシェア

pagetop