ひとりぼっち歌姫とヘッドフォンの彼
 部長がはぁ、とため息をつく。

「君、ボーカル志望でしょ?ギターの審査は別であるし、みんな公平にマイク一本で歌うことになってるからさ……一人だけ特別とは行かないんだよ。 って、説明受けたよね?」

 部長の言う通り、廊下で入部オーディションを受ける列に並ぶ時同じことを説明され、私のギターは取り上げられた。でも、そんなの事前に聞いてない。

「で。 どうする? もう一回やる?」

 『いいです』と言って、今すぐ逃げ出したい衝動に駆られる。
 部長は笑顔を崩さずに、でも冷めた目で私を見ていて心が折れそうになる。
 でも、ここで逃げだしたら今までと変わらない。
 諦めちゃダメだ……!

「っ、やらせて、くだ、さい……っ」

 部長はため息をついて、SE担当に目線を送った。すると間もなく、私が持ってきた音源が流れ出す。
 小さい頃からよく聞いてきた、私の大好きな歌だ。毎日のように口ずさんで、どんな時も自分を励ますために歌ってきた。
 大丈夫、歌えるはず……!
 私は軽音部幹部たちからの冷たい視線に目をギュッと瞑った。
 歌い始めのタイミングが来て、息を吸う。
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