両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
 私の思いつめた表情に気付いたのか、お義母様が気遣うように声をかけてくれた。
「あの、ご相談があるんです」
 そう切り出した声が緊張で少し震えてしまった。落ち着こうと深呼吸をしていると、猫用のクッションで寝ていたタビちゃんがこちらに歩いてきた。
 ソファに飛び乗り私の膝の上に座る。そして『なでろ』と命令するように私の手を尻尾で叩いた。その横暴なかわいらしさに思わず頬が緩む。
 タビちゃんは母猫に捨てられた子猫だった。初めてタビちゃんを見つけたときは、手のひらに収まるほど小さく、いつ心臓が止まってもおかしくないんじゃないかと不安になるくらい弱っていた。
 私と翔真さんが見つけていなかったら、きっとタビちゃんは助かっていなかったと思う。
 そんな小さな子猫が今ではこんなに大きく元気になってくれたことに愛おしさを感じる。
 どんな命だって幸せになる権利はある。そう思いながらタビちゃんの柔らかい体をなでた。
 そして顔を上げ前を向く。
「実は、翔真さんと離婚したいと思っています」
 私の言葉が予想外だったんだろう。お義母様は驚いて口元を手で覆った。お義父様は深刻な表情で私を見つめる。
「離婚なんて、どうして」
「それは、その……」
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