両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
「たまたまって。それ限定品でなかなか手に入らないはずよ」
「え? そうなんですか?」
「そのブランド日本ではまだあんまり知名度が高くないけど、世界的にはすごい人気なの知らない?」
 ヨーロッパの王族やセレブたちが愛用しているブランドだと教えられ、私が想像していた以上に高級なものと知り絶句する。
「そんな高い物をさらっとくれるなんて……」
 翔真さんの金銭感覚はいったいどうなっているんだろう。青ざめる私の隣で、萌絵さんが目を輝かせた。
「きっと副社長は、倹約が好きな彩菜ちゃんに贅沢を覚えさせる作戦なのね」
「私に贅沢を?」
「いつも高価なプレゼントをくれるし、ほしいものはなんでも買っていいってカードも渡されているんでしょう?」
「そうですけど……」
「副社長は彩菜ちゃんに贅沢な暮らしに慣れさせて、自分なしでは生きていけないようにしたいんだわ。財力に物を言わせて依存させようとするなんて、さすがセレブな御曹司!」
 熱く語る萌絵さんに、困惑しながら口を開いた。
「萌絵さん。ドラマの見過ぎだと思いますよ」
 萌絵さんは優しくていい先輩だけど、ときどきよくわからないスイッチが入って妄想が止まらなくなることがある。
「そうかなぁ」
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