鏡と前世と夜桜の恋

-- その頃。

雪美が逃げた牢ではおすずの甲高い声が反響していた。





「外道を逃がして自分が残った?つくづく愚かで馬鹿な男だねえ〜」

おすずは無表情の蓮稀を見下ろすが何をされても反応しない。蓮稀の無感情が癇に障る… 蓮稀を痛めつけ跨り勃たない自身を無理矢理自分の中に挿入しようとする。


「使えないならいらないねこんな役立たず!」

懐から鈍く光る刃が覗いた次の瞬間、蓮稀の自身に鋭い痛みと温かなものが床へ滴った。

その後、おすずは蓮稀の左の骨盤辺りを突き刺す… それでも蓮稀は声を上げない、痛みが無いわけではない。

ただ、覚悟を決めたその瞬間から心を切り離しただけ。


このまま終われるなら、鈴香の元へ逝けるなら…

感情を捨てた蓮稀は顔色一つ変えず。そんな蓮稀の態度が気に食わないおすずは " 何故勃たない!? " と、今度は蓮稀の首に小刀を突き刺した。

「なんだいなんだい… 何で反応しないんだい役立たず!これじゃあ入らないじゃないか!早く勃たせな!!」


イライラを募らせたおすずは、続けて蓮稀の右脇腹と左の二の腕に思いきり小刀を深く突き刺した。

-- 鈴香を守れなかった。

雪美を逃がし、咲夜まで巻き込んだ。自分が我慢し耐えればいい。そうしていれば誰かの平穏は守れると思っていた。

… けど違った。

俺が動かなかったせいで鈴香は逝った。


あの時、鈴香を無理矢理でもここから連れ出していれば鈴香は逝かずに済んだかも知れない。

咲夜ともっと早く京へ行く話しを勧めていたら… 雪美まで怖い思いをしなくて済んだのかも知れない。

俺は疫病神だ、幸せになる資格など最初から無い。薄れゆく意識の中で蓮稀はかすれた声で呟く。

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