鏡と前世と夜桜の恋
「あの日、最後まで信じて待ってた」
雪美は声をあげて泣いた。
「ごめんなさい… 」
「来ないから何かあったんだって思った。落ち込んだけど… でも、だからゆきを責めたことなんて一度もない」
雪美は咲夜の着物を強く握る。
「すごく怖かった… 」
「陽菜さんと結婚すると聞いて… さくが… 私を嫌いになったんじゃないかって… 」
咲夜は少しだけ笑って首を振る。
「嫌いになる理由なんて、一つもない」
「むしろ… 」
言葉が詰まる。
咲夜の瞳にも涙が浮かんでいた。
「会えないほど、好きになっていった」
顔を上げた雪美に対して咲夜は涙をこらえながら笑っていた。
「毎日想ってた」
「ゆきはちゃんと飯食ってるかな」
「笑えてるかな」
「泣いてないかな」
「… そればっか考えてた」
雪美は胸が苦しくなる。
同じだった。
朝起きても。
花を見ても。
雨が降っても。
月を見ても。
何をしていても咲夜がいた、姿は見えないのに、心だけはいつも隣にいた。
「私もだよ… 」
雪美は震える声で言う。
「毎日さくを想ってた」
「今日も生きていてほしい」
「怪我してないかな」
「ちゃんと眠れてるかな」
「苦しんでないかな」
「それだけで、一日が終わってた」