鏡と前世と夜桜の恋
咲夜はもう耐えきれず、雪美を強く抱き寄せた。
「会いたかった… 」
初めて聞く、咲夜の泣き声。

いつも雪美を守るために笑っていた人が、子どものように声を震わせて泣いていた。
「会いたかった… ゆき… 」
雪美も咲夜の背中へ腕を回す。
「私も… 会いたかった… 」
二人は何度も同じ言葉を繰り返した、それ以上の言葉が見つからなかった。
長い年月の寂しさも。
届かなかった想いも。
交わせなかった手紙も。
言えなかった「好き」も。
その一つひとつが涙となって溢れ、鴨川へ静かに落ちていく… 川は何も語らず流れていた。
あの日、二人を引き離した時間も。
今日、ようやく結ばれた時間も。
すべてを優しく包み込むように。

渡月橋の上を夜風が吹き抜ける。雪美の涙を優しく拭いた咲夜は、指先をそっと重ね、雪美も握り返した。
" もう絶対に離さない "
言葉にしなくても、その温もりだけで互いの想いは伝わっていた。世界中が敵になっても、この手だけは離したくない… そう願ったのは、雪美だけではない。
咲夜もまた、同じ願いを胸に、雪美の手を静かに、そして決して離さぬよう強く再び握り返した。