鏡と前世と夜桜の恋
人生の総合評価を提示すれば、俺は幸せな方だと思う。生い立ちはどうであれ、江戸の世で最も裕福な家系に産まれた俺は祝言を挙げる歳まで自由気ままに生きてきた。

俺に対して口答えする者もいなければ、この頃の俺は手に入れたいものは何でも手に入れられた、ただ1つのモノを除いては...
「関 (せき)の息子も祝言が決まったそうだ。お前もそろそろ考えてはどうだ?」
ーー誰が考えるかそんなもの。
ちらほら耳に入る村の祝事。俺も適齢期に近付き初め… 政条家、長男『蓮稀』は、両親の持ち帰る縁談を蹴り続けてきた。1人のおなごに夢中になるなど笑止千万、気が乗らず興味がなかった。

そんな中、弟の『咲夜』にも縁談の話しが飛び込んで来た。お相手は国家権力を握る町奉行所 (警察)家系の愛娘。この一家は欲しい物ならどんな手段を使っても手に入れないと気が済まない強欲気質… 母の『マツコ』は、○○県の地主『政条 (せいじょう)』家の使用人の1人として忍び込み仕えていた。

マツコは政条家で使用人として名乗っていた名前で本名は『おすず』
おすずは政条家に産まれた容姿端麗の兄弟が成長するにつれて密かに恋心を抱き… 2人は歳を増す事に人目置かれる色男に成長。私はあの男が欲しい。おすずは特に " 蓮稀 " を自分の玩具にする為、兄弟のお世話係として潜り込んだ。
おすずは蓮稀を、権力をチラつかせれば言いなりになる他の男達と同様に自分の信者にしたかった。本来、自分の愛娘と結婚させたかったが愛娘は弟『咲夜』に夢中…
「また来たのか?俺は自分が100% 耽溺したおなご以外一緒になる気はない!」
両親から縁談の話しを聞いた咲夜は大きな溜め息を吐く。
おすずの愛娘の名前は陽菜 (ひな)
母親の巨漢体型は受け継がなかったとはいえ性格は瓜二つ。自分が1番、気に食わなければ捻くれ我儘を良い、泣き叫び攻撃的になる… 王子様に憧れ黄色が好きな芋屋で働いている女。店では着物の柄から『千の花=千花 (ちか)さん』と呼ばれていたそう。

おすずは " 見た目の綺麗な生き物 " が手に入いるなら兄弟どちらでも良かった。陽菜は陽菜で咲夜の容姿を完全に気に入り「咲夜さーん❣️」と、毎日の様に咲夜を追いかけ回しどこにでも現れる異常なほどの執着心に、咲夜もウンザリ…
おすずは『猫熊』陽菜は『うさぎ』の人形がとてもお気に入りだった。
「お相手方は国家権力を握る愛娘… 逆鱗に触れれば何をされるか分からん。特に愛娘は大層お前を気に入ってるそうだ。咲夜、形だけでも… 」
「蓮稀が断れば次は俺?俺はゆきと一緒になるんだよ。雪美以外に興味はない、俺は絶対に受けないからな!!」
父の話しを遮り声を荒げる咲夜。