鏡と前世と夜桜の恋

雪美から箸を取り上げ外に出た蓮稀は、誰もいない場所で雪美の名を口にした。

その声には、今まで隠してきた想いが滲んでいた。

" 愛している "

それは嘘にできなかった。

愛しているからこそ、笑顔にしたい。

自分ではなく咲夜の代わりに… そう願うことが、蓮稀にできる最後の愛だった。



昔から、守ってやりたいと思っていた弟。時には生意気で、時には危なっかしくて、それでも誰よりも優しい。

雪美はそんな咲夜の心から愛する人。

ならば兄として、自分がするべきことはひとつだった。

二人の未来を邪魔しないこと。

そして――

二人の未来を守ること。



たとえそのために、自分が何かを失うことになったとしても。

蓮稀は空を見上げた。

青く澄んだ空が、どこまでも続いている。

「… それでいい」

自分に言い聞かせるように、静かに呟く。

胸の奥は、決して穏やかではなかった。







たとえそのために、自分が何かを失うことになったとしても。

蓮稀は空を見上げた。

青く澄んだ空が、どこまでも続いている。

「… それでいい」

自分に言い聞かせるように、静かに呟く。

胸の奥は、決して穏やかではなかった。



本当は、苦しい。

本当は、自分の女として雪美の隣にいたい。

彼女が笑うところを、これからもずっと俺に向けられるものになればどれだけ幸せであろうか…

それでも――。

「二人の事を守れるなら、それでいい」

その言葉を口にした瞬間、蓮稀は初めて自分の決意が本物になった気がした。



誰かを愛するということは、必ずしもその人の隣にいることではない。

時には、自分の想いを胸の奥へしまい込み、その人が幸せになれる道を選ぶことなのかもしれない。

蓮稀は静かに目を閉じた。

それが、兄として。

そして一人の男として。

蓮稀が選んだ、最後の覚悟だった。

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