甘やかで優しい毒〜独占欲強めな彼に沼る
意外とすぐにタクシーが泊まり、隣で会計しだして、やっと、1人になり普通に息ができる気がしていた。
だが。
「降りるぞ」
「えっ…」
手を繋がれているせいで、否応なしに降ろされ、盆地に広がるデザイナーズマンション群は、まるでヨーロッパの街並みのような小道で繋がっている。
見惚れている間にタクシーは、遥か遠くに行ってしまい、腰を抱えられ、ゆっくりと彼の住むマンションへ向かった。
「あの?」
「ん?」
「部屋までついてきてなんですけど、私は、どうしてここに連れてこられたんでしょうか?」
「まだへっぴり腰だろ。買い物行けるのか?俺のせいだからな…飯ぐらい作ってやるから、そこ座ってろ」
「あー、助かります」
彼の呟きは、こういうことだったのかと。
彼のせいなので、甘んじてご馳走になろうと、指定されたソファに座り、カバンからスマホを取り出した。
その際に、まだ、飲めずにいたピーチティーをチビチビと飲みだす。
火傷した舌先は、もう癒えているらしく、沁みることがないのが救いだろう。
昨夜の朱音さんへのお礼と、食事の支払いの件を連絡する。
その後は、メールチェックと、時間潰しに動画などを見ていたら、醤油を焦がした香ばしい香りと、ごま油のいい匂いが香ってくる。